■収録曲
SIDE A
1 “Laica Wind / ライカの風” (3:10)
2 “Dr. Blackhole / 真空医師” (3:02)
SIDE B
3 “Cosmic Ballet / 反抗のバレエ” (3:58)
4 “TRANCELATE / トランスレイト” (3:20)
■今作の物語の舞台
時系列的には、アルバム四曲目の
「TRANCELATE / トランスレイト」に登場する1人のアンドロイドの少女の物語から始まります。
「舞踏会を夢みるアンドロイドのために、娘は自らの命と引き換えに最後の舞台となる。」
この世界では政府が惑星に暮らす者の命の長さを決め、短い周期で命のリセットを行う事で、平和のバランスを保っていた。
そんな惑星で暮らす労働者階級のアンドロイド親子だが、ある日突然、政府から母の余命は55秒だと宣告される。
そんな母には「仮面舞踏会に行ってみたい」という夢があったが、現実を受け入れ、穏やかな表情で娘を見つめていた。
母から大きな愛情を受けて育った娘は、どんな手段を尽くしてでも、悪事に手を染めてでも、自らの命を捨ててでも、母の夢を叶えたいと強く望んだ。
その異常なほどの執着心が奇跡を起こす事になる。
なんと少女の身体の粒子の一つ一つが光る線となり、その夢を叶えるために大きな宮廷を建築し始めたのだ。
こうして最終的に「宮廷そのもの」となった娘が今回の仮面舞踏会の舞台である。
「宮廷」は様々な時空と繋がっており、自らの意思で行く事は出来ないが、常に宇宙のどこかを彷徨っている。そこへ数えきれないほどの彷徨うアンドロイドの魂が集まり、仮面舞踏会が行われているという…
※TRANCELATEとは 恍惚、夢中、有頂天、失神、昏睡状態、トランス状態の”Trance”と翻訳、解釈、変換、移転の”Translate”を組み合わせた架空の英語である。
ここまでが「TRANCELATE / トランスレイト」の物語である。
そして、残りの三曲は、その会場内にいる三体のアンドロイドの魂それぞれの物語にフォーカスが当てられている。
■一体目のアンドロイド
一体目のアンドロイドは、一曲目の “Laica Wind / ライカの風” に登場するアンドロイドである。
「アンドロイドは風を求め海へと走ったが、人間の知る風とは別の解釈で “風” を理解する。」
都市の暮らしの中で、このアンドロイドはとにかく「風」に興味を持ち、憧れ、情報を集める日々を過ごし「風」について考えている時だけは心が救われていた。
しかし、電子皮膚・培養皮膚・リアルな皮膚シミュレーションでは感じられない何か、空気の流れではない何かが「風」なのではないかと考え始めていた。
そして、ある日決心して、街を抜け出し、海のある方角へと走り出す。
街を出る事も、海に近づく事も犯罪であるため、もう戻ることは出来ないという中、ただひたすらに走っていたが、砂浜に着いた瞬間アンドロイドは足を滑らせて大きく転倒してしまう。
そして、空中を回転する中で感じた感覚を「風」だと悟ってしまう。
アンドロイドは気がつくと海の中に腰まで入っており、そのまま進み続け、その鋼鉄の身体は深い海に沈んでしまう。
意識が遠のく中、海底で見たものは自分と同じ大量のアンドロイドであった。
こうしてこの魂は「宮廷」と繋がり、仮面舞踏会で彷徨う事になる。
※この海底の舞台は2023年発売の3rdカセット”Dreaming in the water – 海底の叫び”に繋がっている。
ライカの風の「ライカ」とは?
・ライカとは実在する犬であり、1957年11月3日、歴史上2番目の人工衛星、スプートニクIIの唯一の乗組員として、地球軌道を周回した最初の動物。ライカは打ち上げ直後に宇宙で死んでしまったが、その死因、真実を隠された。
・雷火 (いなびかり。いなずま。落雷によって起こる火災。)
という2つの意味がかかっている。
■二体目のアンドロイド
二体目のアンドロイドは、二曲目の “Dr. Blackhole / 真空医師” に登場するアンドロイドである。
「完成目前のアンドロイドをドクターは眺めていた…最後の工程ではドクターに出来ることはないのだ。」
医療室では、熱にうなされ悪夢を見ているアンドロイドの脳内の映像が複数のモニターから流れている。
オペレーションの最終段階で必要なのはアンドロイド自身の苦しみや悲しみの経験であるため、
ドクターがアンドロイドに対して出来る事は何もない。
成功も失敗もそのアンドロイド本人にかかっているという状況であり、ドクターはただそれを眺めている。
結局のところ、このアンドロイドが完成したのか、しなかったのかは描かれていないが、何故、このアンドロイドは仮面舞踏会にいたのか?
…それは悪夢の中の世界と「宮廷」が繋がってしまったからである。
自身の存在をブラックホールとして表現していたり、とにかく皮肉や独り言をブツブツ言っているDr. Blackholeだが、実は銀河では素晴らしい技術を持つ優秀なドクターである。
※この曲で登場するDr. Blackholeは2022年発売の1stアルバム”Time Government / 時間管理人”に登場するDr. Kawamoriの弟子の1人である。
Dr. Kawamoriは宇宙の旅番組Sugar Factory Vにも登場している。
Dr. Kawamori
”Time Government / 時間管理人”
こちらの作品はカセットA面/B面という呼び方ではなく、
A (Doctor / 医者) 1 “Regulation / 規制” (2:05) 2 “Magic in the Square Moon / 四角い月の魔法” (3:44) 3 “Rainbow Dinosaur Generation / 虹色恐竜時代” (2:00) 4 “Baby Mosquito in the UFO / 迷い込んだベイビーモスキート” (1:16) B (Patient / 患者) 5 “Life in Stolen Universe / この盗まれた惑星” (2:04) 6 “Home / 故郷” (3:56)7 “Need Some Blue / 青が欲しい” (2:37) 8 “Stage5 / ステイジ5” (1:05)
このように「医者」と「患者」となっている。
■三体目のアンドロイド
三体目のアンドロイドは、三曲目の ”Cosmic Ballet / 反抗のバレエ” に登場するアンドロイドである。
「銀河形成プログラムの中で、アンドロイドは反抗のダンスを踊り続けた。」
このアンドロイドが登場するのは「宮廷」が誕生してから遠い未来。仮面舞踏会で踊る無数のアンドロイドの魂の中から、彷徨う魂を拾い上げて別の空間に導いていく存在がいた。
…それが三体目のアンドロイドである。
いつかは「宮廷」そのものを崩壊させたいと考え、1人で戦い続けている。
この仮面舞踏会の存在によって救われている魂もあるが、一方ではスタックしている魂もあるという事実がある。
この宮廷が崩壊したかどうかは今作では描かれていないが、最終的には「宮廷」である元アンドロイドの少女の魂を救いたいという正義のもと行動し、会場の中で反抗のバレエを踊り続けている。
皮肉なのか、宿命なのか、本人は「宮廷(元アンドロイドの少女)」の子孫である事を知らない。
※”Cosmic Ballet / 反抗のバレエ” に登場するアンドロイドは2022年発売の2ndアルバム”Beyond the life(邦題_命を超えて)”のアルバムジャケットに登場する仮面をつけたアンドロイドである。
こちらが”Cosmic Ballet / 反抗のバレエ”に登場するアンドロイド。
そして…
こちらが宮廷の正体、元アンドロイドの少女である…
物語の終わりは…
子孫が命を超えて、この物語を終わらせようとしているところで、”Cosmic Ballet / 反抗のバレエ” 最後のリリック
Then, voices slowly fade away... そして、その声は遠ざかっていく…
「アンドロイドの仮面舞踏会」から銀河の琵琶法師が離れて行くところで、この物語は終わる…
いかがでしょうか?
以上が今作”Masquerade of the android / アンドロイドの仮面舞踏会”の物語です。
■最後に
Three Ring Circusの全楽曲のリリックの内容は(1曲を除き)今回語ったような銀河の歴史となっております。もちろん地球も含めて。
皆さんの解釈が好きなので、今まで物語自体の解説をした事はなく、細かい設定や内容は個人のメモに記録されているだけでした。
それらの詳細を誰にも教えずに死ぬ予定でしたが、Three Ring Circusのリリックに興味があるという方に向けて、今回は試しに解説してみました。
その上で皆様の比喩、解釈を混ぜていただき、物語がまた一つまた一つと変化していく事が楽しみです。
とは言っても、Three Ring Circusの一番の見どころは、大山アキト、都並和希、Johnny。この3人のライブだと思っております。
毎月どこかでライブ活動を行なっておりますので、是非、実際に会場に足を運んでいただき、観て、聴いて、気に入って頂けたら光栄です。
それではごきげんよう。
ラカ!
銀河の琵琶法師 大山 アキト
Masquerade of the android(邦題_アンドロイドの仮面舞踏会)
■収録曲
SIDE A
1 “Laica Wind / ライカの風” (3:10)
2 “Dr. Blackhole / 真空医師” (3:02)
SIDE B
3 “Cosmic Ballet / 反抗のバレエ” (3:58)
4 “TRANCELATE / トランスレイト” (3:20)
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